マゼンダ 〜悩み〜



 イザークは、そのデータを見たまま固まってしまっていた。

 しばらくの間、頭の中が真っ白になり、紙面上の結果を反芻する。
 そして理解すると同時にぶるぶると震え出した。

 「イザークぅ、聞いてくれよー!」
 そこへ後からディアッカがイザークに抱きついてきた。
 「この身体測定の結果さ、ウェイトが10キロ近く落ち込んでやがんの。
 ダイエットでもしてるのか、ってあの女医に嫌味言われ・・・あれ?」
 珍しく興奮していたのか一気にまくし立てたディアッカだが、イザークが手に持っていたものに気が付いて言葉を切る。
 それは今ディアッカが持っているとの同じ、先日行われた身体測定の結果だった。
 その内容をまじまじと眺め、ディアッカの笑みが乾く。

 「・・・お前も、ウェイト落ちてるな。かなり」

 そう。
 イザークが硬直していた理由は、体重が10キロも落ちていたからだった。
 「お前・・・ちょっとこれ、異常じゃない?」
 ディアッカが自分のことを棚上げにして言う。
 イザークは一瞬ディアッカをきっとにらみつけ、「見せろ!」と噛み付くように言って彼の手からデータの紙を奪い取った。
 言葉通り、やはりディアッカの体重はかなり落ちていた。
 それでもイザークほどではなかったのだが、身長の欄を見ると、数ミリしか伸びていない自分に比べ、
 まだ成長期が続いているらしいディアッカは2,3センチ伸びている。
 「お前は身長も伸びているじゃないか。それでこの減り方はやっぱりおかしいんじゃないのか?」
 「そっか?」
 「そうだ!貴様の方がおかしい!」
 身長が伸びていないことを理由にするのは悔しいが・・・。
 そんなイザークに対し、ディアッカは腕を組んで少し唸る。
 「でもさ、俺が痩せたのって向こうで・・・アークエンジェルで捕虜しているときだし、
 あのときと比べればちょっとは戻ってると思うぜ」
 「・・・」
 「お前のウェイトは、その・・・現在進行形だろ?」
 身長も伸びないとは限らないし。

 その通りだった。



※ 以下18禁。大丈夫な方だけ反転してください

 「あ・・・、んっ」
 吐き出される息が熱い。
 埋め込まれた熱に体が震えた。
 「ちょっと、・・・まッ」
 「イザーク・・・」
 組み敷くレイが名前を呼んで覗き込むが、イザークは苦しげに体をよじった。
 銀糸の髪がぱらりとシーツに散る。
 その様に煽られ、レイはため息を漏らした。
 無言のまま腰を動かす。
 「待てッ、て・・・!」
 有無を言わさないそれに、イザークが呻く。
 どうしようもなく体の中に相手の熱を感じ、背中を快感が走り抜けた。
 「ああっ!」
 声を抑えきれず、首をのけぞらせるイザーク。
 その様子はあまりに扇情的で、綺麗だ。
 白い首筋に唇を寄せる。
 噛み付きたい衝動をこらえ、舌を這わせれば、びくりと体が揺れた。
 「レ・・・イ・・・」
 少し上半身を持ち上げ、また行為を再開する。
 突き上げから逃れようとする細腰を掴み、さらに深く。
 「・・・!」
 イザークが口を開きかけ、そして喉を詰まらせた。
 少々乱暴な行為に文句を言おうとしたらしい。
 レイはかまわずに行為を続ける。
 イザークが快感と苦しさがごちゃ混ぜになったような顔で頭を振るが、気にしていられない。
 こちらにも余裕がなかった。
 「くッ・・・」
 「!」
 体の中で熱が荒れ狂う。
 達したイザークが声にならない声を上げ、体を震わせた。
 締め付けられたレイも呻いて熱を解放する。
 やがてどちらともなく甘い声を上げ、シーツに深く沈みこんだ。
 心地よい倦怠感が体を覆っていった。

 そのまま抱き合い、眠りにつく・・・はずだったのだが。



 「デブ」
 「・・・はあ?」

 言われたことの意味が分からず、レイは素っ頓狂な声を上げる。
 イザークの体を抱いたまま首だけ向けようとしたが、頭を鷲掴みにされて力任せに押された。
 「いたっ!な、なんなんですか?」
 首の筋が違ってしまう前に慌ててイザークの上から退いて隣に転がった。
 しかしその勢いを殺せず、ベッドから落ちそうになる。
 間一髪で落下は阻止したが、イザークがシーツを自分の方に引き寄せてしまったので、
 端に寄ったレイは全裸で取り残されてしまった。
 「・・・」
 怒らせただろうか・・・。
 なかなか互いのスケジュールが合わず、こうやって体を重ねるのも久しぶりだったのだ。
 ちょっと我慢がきかなかったかもしれない。
 仕方なく、床に脱ぎ捨てていたジーパンを拾って足を通した。
 「イザーク、その・・・」
 「お前、重い」
 「はい?」
 「だから、重いんだ!」
 反対側を向いていたイザークが振り返りながら眉を吊り上げている。
 「待てって言ったのに・・・。窒息するかと思ったぞ!」
 「そうでしたっけ?」
 「そうだ!!」
 思い出す限り、窒息させてしまうほどイザークの上に乗りかかってはいない。
 というか、それではやりにくいだろう。
 口にしたらさらに怒るので言わなかったが。
 「俺が重いんじゃなくて、イザークが細すぎるんじゃないですか?」
 「そ、そんな・・・こと」
 図星か。
 確か二ヶ月ほど前の身体測定のとき、レイは『標準よりやや痩せぎみ』と言われた。
 ギルバートと一緒にいるときは痩せていることをよく指摘されていたので、標準に近づいたことを喜んでいたほどなのだ。
 それなのにこの人は・・・。
 いきなり『デブ』とは。
 「と、とにかく、重いんだ!一年も経ってないのにどうしてそんなにでかくなるんだ、お前は!」
 「成長期ですし」
 「人が仕事で疲れてんのに会うたびにこれじゃあ体がもたんだろうが!!」
 「気持ちよくなかったですか?」
 「バッ・・・!!」
 イザークは耳まで真っ赤にして硬直する。
 と、レイは何かを思いついき、上半身を半分しか起こしていないイザークの横に座った。
 「それなら、イザークが上に乗ればいいじゃないですか」
 「・・・?」
 「それなら問題ないでしょう。早速試しますか?」
 「は、ちょ、・・・ちょっと待て!まさか上に乗るって・・・んん〜ッ!」

 当然、そのまさかだったわけで。
 
 
 

 「ディアッカ・・・どうしたら効率的に太れると思う?」
 「・・・」

 ディアッカは、この部屋に女性がいないことがとても幸いだと思った。
 そんなことを言ったら最後、セクハラだと訴えられかねないだろう。
 「効率的って・・・そんなの俺が聞きたいよ・・・」
 それにしても、2年前の自分だったら笑い話にでもしただろうが、
 今の自分は彼と全く同じ問題を抱えているだけに・・・正直笑えない。
 「焼肉でも食いに行く?」
 「・・・駄目だ。想像しただけで気持ち悪い」
 イザークは首を振って口元を押さえる。
 大げさに言っているわけではないらしい。
 「何かあった?」
 「話したくもない」
 「そうですか」
 どうせレイ絡みだろう。
 かつてレイの立場にアスラン・ザラがいたわけだが、それについて散々気苦労をさせられただけに、
 ディアッカは二人のことについて自分から首を突っ込もうとしなかった。
 それにしても休み明けから不機嫌なオーラをかもし出すのはやめて欲しい。
 新兵たちが怯えてしまうではないか。

 ディアッカがそれを口にしたら、イザークはそんなのかまっていられるか!と噛み付いただろう。

 あのあとレイに二回、三回とやられて・・・しかも涼しい顔でイザークの体を軽々と持ち上げるわけだから、
 いろいろな意味でショックだった。
 
 「とりあえず、体力づくり?」
 「・・・そうだな」
 いつか逆転してやる。



 「レイ・・・その顔」
 「なんだ?」
 「いやその・・・なんでもありません」
 一方寮では、赤く腫れたレイの左頬にシンが目を丸くしていた。
 当然それはアカデミー中の噂になるわけだが、レイはそれほど気に留めていなかったらしい。
 むしろ機嫌が良かったとか(シン談)。

 敵は手強い。



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2005/04/30