タタカイ 03




 ロッカーで手早くパイロットスーツを身にまとう。
 「・・・ちくしょうっ」
 ため息をついたつもりが、無意識に悪態になってしまった。
 何かあったときは自分が何とかするとラクスに偉そうに言っておきながら、
 今こうして出撃しようとしている自分に酷く矛盾を感じてならない。
 ラクスならどうするだろう。
 戦うべき時だったと、この時だけはそうするしかなかったと言ってくれるだろうか。

 荒々しくロッカーを閉めると、部屋のエアドアを開ける。
 「!」
 「あ・・・イザーク」
 部屋を出ようとしたところで、黒いパイロットスーツに着替えたイザークとはち合わせした。
 イザークは一瞬身をすくめる。
 顔だけは無表情だったが、自分に怯えているかのようなそれにアスランの心はさらに波立った。
 「イザーク」
 名前を呼ぶ。
 しかし彼女はそれを無視し、通り過ぎようとした。
 「イザーク!」
 とっさにイザークの手を掴む。
 そのまま男子ロッカーへと引きずり込んだ。
 当然イザークは抵抗する。
 「やめ・・・ッ!」
 「声を出すな。見られる」
 細い身体を引き寄せ、壁へ押し付けた。
 ドアを閉める。
 他にパイロットはいないから、当然中には二人きりだ。
 「何、を・・・」
 「今までどこでどうしていた?どうして俺やディアッカに連絡をよこさなかった!?」
 「今はそんなこと言っている場合・・・」
 「答えるんだ!」
 これではまるで脅しだ。
 イザークは一瞬肩を揺らしたものの、首を振ってうつむくばかりだ。
 しかしここで問い詰めなければ、次のチャンスがいつになるのか分からない。
 蒼い瞳を覗き込むように、下から顔を近づけた。
 接吻しそうな距離まで接近し、イザークの表情がこわばる。
 背けられようとしていた顎を乱暴につかみ、自分に向けさせた。
 「イザーク!」
 「やめろっ・・・!」
 頑なに自分を拒むイザーク。
 アスランの胸に、あの甲板での時と同じ、どす黒いものが沸き起こった。
 自分はこんなに心配していたのに。
 それなのに、彼女は気づきもせず、見ようともしないで拒み続ける。
 ・・・彼女が悪い!

 「い・・・、いやっ!」
 「声を出すなっ」
 「いや・・ッ、・・・イ!」 


 『ザラ隊長!何をしているの?』


 「!!」
 「・・・っ!」
 タリアの声?
 近くからだった。
 そんな馬鹿な、部屋には二人しかいないはずなのに・・・。
 ぎょっとしたアスランは、反射的に動きを止めてしまった。
 「放せ!」
 イザークはアスランの力が緩んだその一瞬に、腕から抜け出す。
 そのまま開閉ボタンに拳を叩き付け、乱れた格好のまま廊下に飛び出した。
 追いかけようとして、アスランはふらふらとよろめく。
 自分は一体何をしていた?
 彼女に何をしようとした?
 くらくらする頭に、またタリアの声が叩きつけられた。
 『アスラン、まだ発進できないの?イザークはそこにいる?』
 「通信、機?」
 タリアの声は通信機からの声、だ。
 さすがにそれを切るまでは気が回らなかった。
 SOUND ONLY であることを確認し、今の状況は伝わっていないだろうことに息をつく。

 足元には、自分の赤いヘルメットと、イザークが落としていった黒いヘルメットが転がっていた。



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ブログ掲載 2006/6/4
2006/12/27