ソラ 05




 連合の艦隊は、かなり後退してきていた。
 ・・・つまり、より地球に近くなっている。
 「このまま大気圏に墜ちるつもりか?」
 腑に落ちない敵の動きに、レイは眉をひそめる。
 ミネルバが、都合よくそれに乗るとは限らないというのに。
 その時、ミネルバから通信文が入った。
 「ガイア・・・それにアビスを撃墜か」
 レイは思わず感嘆を漏らす。
 ガイアはシンが、アビスはアスランが討ち取ったようだ。
 セカンドシリーズの製作者たちは嘆くだろうが、これでデュランダルも一安心だろう。
 それにしても、自分はミネルバから少し離れすぎたかもしれない。
 先ほどまでしつこいダガーにまとわりつかれていたので夢中だったが、ミネルバから大分距離があるようだ。
 敵のMSが減っていることをいぶかしみながら、レイは機体を艦に戻そうとした。
 と、敵艦隊の両端翼がいつの間にか前進していることにぎょっとする。
 このままこらの艦隊の後ろに回り込もうとしているのか?
 いや、それにしては数が少なすぎる。

 だが・・・これに隠れていた援軍が加われば。

 攻撃を受けたのは、そこまで思い至った時だった。
 「!!」
 四方からのビームをぎりぎりでよける。
 そしてカメラに映し出された敵機に思わず舌打ちした。
 アーモリーワンでも見た、マゼンダのMAだ。
 「・・・ッ、こんな時に、厄介な!!」
 MAとはいえ気を抜いたらやられる・・・それだけの能力を有した機だということは、これまでの戦闘で思い知っていた。
 
 
 
 『後方に敵影!これは・・・月からの別部隊!?』

 オペレーターからの報告に、ブリッジだけでなくパイロットたちも凍りついた。
 そこでようやく相手の両翼が遠回りに前進していることに気付く。
 少しお粗末な気もするが、挟み撃ちのつもりなのだろう。
 『本当に、なにがなんでも私たちを地球に落としたいようね』
 タリアの苦い声が聞こえる。
 だがさすがに艦長を務めるだけあり、決断は早かった。
 『MSは全機帰艦!向こうがそのつもりなら、犠牲が出る前に大気圏に突っ込むわ!』
 『えええぇええーー!!?』
 『狙いはこの艦だけのはずよ。他の友軍は退避するよう勧告して』
 アーサーのお決まりの叫びを無視し、タリアはてきぱきと指示を進める。
 黙って聞いていたシンたちパイロットも、彼女の判断が一番だと感じたのか無言で帰艦を始めた。
 カオスこそ逃したもののシンはガイアを、アスランはアビスを撃墜し、戦果としては充分だ。
 だが。
 『メイリン、レイはどこ?捕捉できてるの?』
 オペレーターの少女に確認を取ったのはルナマリアだった。
 そうだ。
 レイの白いザクファントムだけが見当たらない。
 オペレーターもはっとした様子で機影を探る。

 『バレル機のシグナルは・・・い、いました!でも・・・交戦中です。おそらく、例のMAと!!』

 

 マゼンダのMAはレイのザクをしつこく追いかける。
 相手の攻撃は予測もつかないところから来るので、どうしても逃げ場が制限されてしまうのだ。
 どんどんレイはミネルバから離れたところへと追いやられていく。
 向こうもそれが狙いなのだろう。
 「・・・こんなところでッ」
 死んでたまるか。
 
 軍人なのだから、戦場で死ぬのだと。
 そういう割り切ったものはレイにはない。
 自分が帰るのはあの人のところだ。
 他人を寄せ付けず、それでもどこかで温もりを求めているあの人のところだ。
 
 ・・・帰りたい。

 ふいにMAが遠ざかっていくのに気付いた。
 装甲を傷つけられはしたものの、レイのザクはまだ動ける。
 それなのに相手が下がっていく理由が、すぐに理解できなかった。
 まるで、帰りたければ帰りなさいといわれたようで・・・。
 そんなはずはないのに。


 がくん、と機体が揺れる。
 最後に見たのは主砲を発射した直後の黒い艦。
 ボギー・ワン・・・か。
 狙われて、撃たれたらしい。
 まるで他人事のように思いながら、レイの意識は途切れた。
 


back  menu  next



ブログ掲載 2006/9/1
2006/12/27