ユメノナカ 02
「どうしたんだよ、イザーク。俺が来なかったら危なかっただろ」
「・・・」
再びフェイがイザークをたずねてドッグに入った時、そこには先客がいた。
ディアッカ・エルスマンだ。
黒い軍服をまとい、アスランと共にAA級三番艦のパワーズをまとめている。
「いい加減、デュエルはやめたら?それに調子が悪い時には出撃するなよな」
「・・・放っておいてくれ」
「なんだよ、その言い方!俺は心配してるんだぞ」
怒気を含んだ声音に、フェイは不安になった。
ディアッカがイザークに掴みかかるのではないかと心配になり、つい前に出る。
言い合っていた二人が足音に気付き、はじかれるように振り返った。
「・・・誰?」
ディアッカがいかにも不審げな目つきで口を開く。
浅黒い肌に金髪、青のような紫のような変わった色の瞳。
精悍な顔つきで背も高いので、青臭さは抜けきらないものの圧倒するような威厳が確かにあった。
「フォルミュラー・・・またお前か」
「フォルミュラー?」
「評議会議員のフェイ・フォルミュラーだ。話の途中だったのか、・・・すまなかったね」
「・・・」
伊達に政治家をやっているわけではない。
本当に後悔しているような顔つきをしてやる。
それに対し、あからさまにつっけんどんな態度をとってしまったディアッカは戸惑った顔をした。
「し、失礼しました。・・・自分はディアッカ・エルスマンです」
「ああ!エルスマン議員の・・・お父上にはとてもお世話になっているよ」
当然タッド・エルスマンと彼が親子だということなどよく知っているのだが、いかにも今知って驚いた振りをする。
しかしディアッカは僅かに顔を引き攣らせた。
それを見逃すフェイではない。
「・・・何か?」
「い、いえ・・・別に。そろそろ向こうに戻らないといけませんから・・・失礼します!」
ディアッカは敬礼を解くと、そのまま足早に去っていく。
フェイはその後姿を見ながら、「エルスマン親子は不仲」というメモを心の中に書き込んだ。
また何かの折に使ってやろう。
と、それまで沈黙していたイザークが苛立ったように口を開いた。
「フォルミュラー、一体何のまねだ、まだ私に用事があるのか?」
「被弾したのを見たんだ。怪我は・・・ないようだな、良かった」
「・・・」
うつむいたイザークに対し、フェイはそれにしても、と腰に手を当てる。
「あれがエルスマンの息子か。なんだか意外だな。君からの話からだともっと明るい性格なのだと・・・」
「パワーズは、ここ以上に問題が起きるらしい。それでぴりぴりしてるんだ」
「それで君に八つ当たりか?」
「そうじゃない。さっきの戦闘では助けてもらった」
「・・・そうだな、見てたよ」
ディアッカのジンがデュエルを間一髪救っていた。
「でもデュエルの後ろに、もっと危なっかしい操縦するアストレイがいたな」
「・・・知らん」
そのアストレイのパイロットは歳若い少年だった。
戦闘後にコクピットから出てきた彼が目を白黒させていたのを見ていたから間違いない。
経験の浅い新人だったのだろう。
「かばっていたんだろう?どうしてそのことを言わない・・・?言っても無駄なのか?」
「・・・」
「君がデュエルに執着していると思っている当たり、ここで君が受けている仕打ちは知らないようだな・・・まったく」
「フォルミュラー、・・・フェイ、そのくらいにしてくれ。お前の立場まで悪くなる」
「・・・」
「頼む」
ファーストネームを呼んだイザークに、フェイもいい加減口を閉ざす。
彼女の態度の頑なさは、自分の立場を気遣ってのことだというのは分かっていた。
フェイ自身はクライン派に目をつけられてもかまわないと思っていたのだが、かといってイザークを困らせたいわけではない。
けれど。
放っておけないから仕方ないではないか。
アークエンジェルとパワーズは無事プラントに到着した。
ラクス・クライン議長が出迎え、またしてもテロリストという名の悪を叩きのめしたクルーたちにマスコミがフラッシュをたく。
その中で、フェイはこっそりとイザークを艦の外へ引っ張り出していた。
「フェイ!お前・・・!一体何を!?」
「イザーク、この艦を降りたほうがいい」
「な、何・・・」
「俺が後でいくらでも理由をつけるから、今のうちに荷物をまとめろ」
「馬鹿なことを言うなッ」
「このままでは君は駄目になるぞ!もっと自分を大切にしろ」
「・・・しかし」
「エザリア様を支援してくれそうな人にあてがある。お母上はその人に任せよう。
君がこんな思いをしてまでここにいる必要はない」
「・・・」
「エザリア様だって、自分を助ける為に娘がつらい思いをしていると知れば傷つくに決まっている。
俺も協力するから・・・信じて欲しいんだ。ザラやエルスマンの息子のような無責任なマネはしない」
「フェイ・・・」
「さあ、あのおめでたい連中が浮かれている間に早く荷物を・・・」
その時、いくつもの荒々しい足音がした。
「!」
「え?」
周りを取り囲まれていることに気付く。
ぎょっと身を固めたフェイを、イザークがかばうように前に立った。
評議会議員の自分を狙っているのか・・・と思案したところではっとする。
「ちょっ・・・待てイザーク!位置が逆だ!!」
軍人とはいえ女性にかばわれたとなればフォルミュラー家末代までの恥だ。
押しのけるようにイザークの前に立ったところで、
フェイは相手がアイリーン・カナーバの私兵だということに気付いた。
「何だ、一体何のマネだ?」
相手は防弾チョッキをまとい、銃まで構えている。
こっちは丸腰だというのに随分と重装備だなと思っていると、一人が銃をおろして前に進み出た。
「フォルミュラー議員、我々が用があるのはあなたではなくイザーク・ジュールです」
「・・・」
「イザーク・ジュール、君を拘束する」
「彼女が何をした?」
「エザリア・ジュールが、軟禁場所から脱走しました」
「!!」
何?
今・・・何と言った?
イザークとフェイは固まった。
「護衛をしていた兵士は全員死亡。いまだ逃走中です」
「馬鹿な・・・」
「彼女の軟禁先を知るものは限られています。
・・・イザーク・ジュール、あなたには殺人補助および容疑者脱走補助の疑いがかかっています。
我々と同行しなさい」
ブログ掲載 2006/9/22
2006/12/27