エピローグ




 照りつける日差しに顔をしかめながら、立ち上がって大きな伸びをする。
 砂漠化が進むアフリカの一地帯であるこの村は、今日も相変わらずの天気だ。
 それでも夕方になればスコールがやってくる。
 それまでに仕事を終わらせなければ。
 額に滲んだ汗を腕で乱暴に拭いながら、足元の箱を見やった。

 と、急に子供たちの高い声が聞こえてきて振り替える。
 明らかにこの村の住人とは肌の色が違う少年が一人、子供たちに囲まれてこちらにやってきていた。
 初めてここに来た三年前はブレイク・ザ・ワールドを始めとするテロや長年の戦争が原因で余所者を敵視していたこの村の人々も、
 地道なボランティアの甲斐あってか今では挨拶だけでなく家に招いて料理を振舞ってくれる家庭も少なくない。
 ことに子供たちは自分たちとは色の違う人間に興味津々だ。
 少年は真っ直ぐこちらにやってきている。
 自分の下に派遣されるボランティアのことは聞いていたが、15歳そこそこだということに驚いた。
 茶色の髪に青のような緑のような不思議な色合いの瞳、くっきりした顔立ちだが肌の色はアジアの黄色系のものだ。

 「はじめまして!タクト・キサラギです。今日からお世話になります」
 少年は元気に挨拶した。
 礼儀は良さそうだとほっとする。
 「話は聞いてるよ。スカンジナビア出身だって?こんなに暑いところは慣れてないんじゃないかい」
 「い、色々勉強してきましたから!足手まといになるようなことにはなりません」
 少しむっとした様子で言い返すタクト少年の背中の大荷物に苦笑した。
 勉強してきたというのは嘘ではないだろう。
 それに若いから対応する能力も早いはずだ…それまで根性が続けばの話だが。
 「どうしてボランティアに?」
 「…色々なこと、自分の目で見てみようと思って。自分が住んでる地球(ほし)のこともよく知らないって、最近気付いたから」
 「そうか」
 ただの偽善的衝動でこの活動に参加したわけではないようだ。
 ますます少年への好感度が上がる。

 「あのう。ここで、その…植物の苗を植えてるんですよね」
 タクトの視線がいつの間にか足元の箱に移っていた。
 世界中から取り寄せてこの地域に合うよう培養した苗木が揃えてある。
 「すごくたくさん種類がある」
 「ああ。実際に植えて育ててみないとこの地域で根を張るかは分からないから…。早速やってみるかい?」
 「はい!…あ、えぇっと」
 青緑の瞳に困ったように見上げられ、そういえば名乗っていなかったことを思い出した。
 苦笑し、帽子を脱いで右手をタクト少年へと差し出す。

 「アレックス・ディノだ。よろしく」
 「よろしくお願いします」
 
 

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2010/01/16